建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第12回-12月25日付-
現場力を鍛える企業が勝つ
ここまで2008年経審改正の内容を、5評点別に解説してきました。今回は、企業規模別にみた改正内容の全体像を表にまとめてみました。企業規模のとらえかたについては、完成工事高や総資産などの財務面と、技術者数や公認会計士等数などの人材面で区分しました。
評価指標 | 影響範囲 | 影響を受ける内容 |
---|---|---|
完成工事高 | 1000億円以上 | X1評点が2268点程度の上限値で一定になる |
完成工事高 | 0~5億円 | X1評点の評点差が拡大する。下限値も580点から390点程度に低下する |
元請完工高 | 0~1000億円 | Z2評点(新設)が上限値で一定になる |
EBITDA | 0~300億円 | X2評点(新設)で、完工高1000億円以上の範囲で評点差が発生 |
営業キャッシュ フロー (2期平均) |
▲10~15億円 | Y評点(新設)で、中堅企業の規模では評点差が発生 |
利益剰余金 | ▲3~100億円 | Y評点(新設)で、中堅企業の規模では、評点差が発生 |
総資産 (2期平均) |
3000万円以下 | Y評点(新設)で、総資産売上総利益率の分母は、下限3000万円で一定になる |
技術職員数 | 技術職員全員 | Z評点で、技術者1人が2業種までの申請に制限される |
監査の受審 状況 |
監査人の有無 | 会計監査人設置会社の加点に加え、研究開発費も加点対象に追加 |
表のように、完成工事高が5億円以下の範囲では、X1評点が低下するため、現行経審より企業規模による評点差が拡大します。また元請完工高の評点がZ評点に追加されたため、下請中心の場合、評点差が拡大します。
X2評点とY評点には、企業規模に影響される指標が新設されました。EBITDAや営業キャッシュフロー(2期平均)という現金ベースでの利益絶対額と、自己資本額や利益剰余金という利益留保の絶対額によって、評点差が拡大します。
このほか、総資本(2期平均)が3000万円以下という小規模業者の場合、売上総利益率の評価が制限されます。
Z評点も、複数業種の申請が2業種に制限されるため、技術職員数が少人数の場合、評点差が拡大します。
一方で、企業規模の影響を受けにくい評点は、Y評点の「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」、W評点の「労働福祉の状況」「営業年数」「防災協定締結の有無」「法令遵守状況」です。この改正評点の各指標の意図するものを、標語として言いかえてみました。
「適正な雇用環境を整備して有資格者を確保し、適切な水準の設備投資を行って、現場力を強化します。現場の粗利益率を高め、仕入の決済をスムーズに行うことで、仕入価格をより低減します。最終利益は内部留保に努め、自己資本を充実することで、支払利息はとことん低減します。法令順守は当然のこととして、防災協定など社会貢献に努めて、営業許可年数を積み重ねていきます」
08年経審改正では、こうした企業が評価されることになりそうです。
本連載は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。