掲載記事

HOME > 掲載記事 > 建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 > 第10回-12月18日付-

建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第10回-12月18日付-

Y評点は企業間格差が拡大する!?

前回は、現行経審と改正後のY評点の評価指標の変更点と対応関係について、解説しました。現時点で2008年改正Y評点の計算式は公表されていないため、具体的な評点シミュレーションはできませんが、経営状況の評価方法がどのように変化するのかについて、考察しましょう。

現行経審では、4要素12指標からY評点を算出しており、その点数配分は、収益性32.9%、流動性14.1%、安定性35.2%、健全性 17.8%となっています。改正経審ではこれが4要素8指標に減少しますが、4要素のうち絶対的力量の2指標(営業キャッシュフロー、利益剰余金)が、絶対値による企業規模の評価指標であることを勘案すると、財務比率による指標は12から6へと大幅に減少することになります。そしてこの6指標に注目すると、負債抵抗力の純支払利息比率と負債回転期間、収益性・効率性の総資本売上総利益率と売上高経常利益率、財務健全性の自己資本対固定資産比率と自己資本比率、という3要素内の2指標同士の相関が高いことがわかります( グラフ1、2)。

グラフ1
グラフ1

グラフ2
グラフ2

一方、経審改正で廃止される流動性は、3月決算が不利で5~6月決算が相対的に有利になっています。また、同一企業でも年度ごとの評点のばらつきが出やすく、他の3要素(収益性・安定性・健全性)との相関が低いという特徴があります。同じく大部分が廃止される健全性は、安定性との若干の相関が見られますが、7~8割の企業の得点が半分以下であり、企業間の評点格差が小さいという特徴があります。このように収益性や財務健全性と関係が弱い指標、企業間のばらつきが大きい指標が廃止されることにより、改正経審のY評点は、現行経審より企業間の格差が拡大する可能性が高いと考えていいでしょう。
すなわち、改正経審の経営状況分析評点(Y評点)は、現場利益を重要視する「収益性」、負債総額と純支払利息の最小化を評価する「負債抵抗力」、利益を内部留保した自己資本額を投下した総資本や固定資産をベースに評価する「財務健全性」の三つの評価ポイントに、「大胆に絞り込んだ」といえます。

建通新聞 の記事を見る