掲載記事

建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第6回-12月4日付-

ますます重要性を増す「自己資本額」

「自己資本額」は、業種や企業規模を問わず企業経営の状況を示す代表的な指標です。現行経審のX2評点は、「自己資本額 / 平均完工高」と「職員数 / 平均完工高」の2評点を元に、算出されます。「職員数 / 平均完工高」は、完成工事高当たりの職員数が多いほど高い評点を得るため、「企業の生産性向上を阻害しているのではないか」という指摘があり、2008年経審改正では撤廃される予定です。「自己資本額/平均完工高」も、完成工事高当たりの自己資本額を評価しているため、中小企業でも高得点を得ることが可能でした。しかし2008年経審改正では、自己資本額そのものを評価するように変更されるため、企業規模が大きいほど有利に変わります。

また自己資本額=純資産と定められましたが、中小企業の場合、自己資本額≒株主資本といってもいいでしょう。すなわち、創業から基準決算期までの企業努力で稼ぎ出した利益を留保した利益剰余金、そして株主からの出資に由来する資本金、資本剰余金を合計したものになります。ただし資本金を増やすため増資を頻繁(ひんぱん)に行うのは、コストアップにつながり現実的でなく、やはり本業の毎年の利益を蓄積して利益剰余金を拡大するのが、評価アップの本筋だと思います。

中小企業の場合、この自己資本額はマイナス1億円からプラス4億円の範囲に95%の企業が含まれます。2割程度の企業は「自己資本額」がマイナスで、X2評点は加点されません。「自己資本額」がプラスとなる8割程度の企業のうち、3割程度の企業が平均値を超えると推定されるので、中小企業全体の2割強が「自己資本額」の得点で比較優位に位置すると推定されます。つまり2008年改正経審の比較優位は、2~3割のトップ企業が占めると思われます(グラフ1)。

グラフ1 自己資本額 度数分布
自己資本額 度数分布

注:経営事項審査の公表データから、3211社の中小建設業者のデータを単純無作為抽出し、自己資本額を集計してグラフ化した

大幅に順位が変わる可能性が高いX2評点

近年の完工高減少に対して、過去の内部留保を保持して耐えている企業、過剰人員を適正水準に是正できなかった企業が、現行のX2評点では比較優位であり、高い得点を得ている可能性があります。このような企業では、2008年経審改正によって大きく評点が低下するでしょう。そして、利益額そのものを評価する新X2評点は、規模の大きな企業ほどより高得点を獲得できます。改正されたX2評点は大幅に順位が変わる可能性が高いでしょう(グラフ2)。

グラフ2 新X2評点の分布イメージ
新X2評点の分布

建通新聞 の記事を見る