掲載記事

HOME > 掲載記事 > 建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 > 第5回-11月29日付-

建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第5回-11月29日付-

中小企業の中でも差がつく可能性

2008年経審改正で全く姿を変えるX2評点。そのX2評点を構成する「EBITDA」と「自己資本額」は、いずれも企業規模を利益の大きさで評価するものです。基準決算期の利益額である「EBITDA」と、創業以来の事業活動から得た利益を内部に留保した「自己資本額」は、企業の力量をフローの面とストックの面から代表する指標といえます。
「EBITDA」は、イービットディーエー、イービッダーなどと読まれます。米国発の指標で、国内ではあまりなじみがない利益区分ですが、海外投資家が用いる投資尺度として知られます。
「EBITDA」には、いくつかの計算方法がありますが、08年経審改正では、営業利益 + 減価償却費で計算します。すなわち同じ利益額を稼ぐなら、積極的に設備投資を実施する企業の方が有利だ、ということです。まず「EBITDA」の元になる営業利益は、工事現場の利益から本社費用を控除したものですから、効率的な経営で現場利益をたたき出す企業が評価されます。そして、現場で使用する建設機械などの資機材は、レンタルで調達するより、自社保有して減価償却しながら使用する方が有利です。
固定資産を保有することで経営状況分析評点(Y評点)が低下するため、設備投資が抑制され、レンタル利用が拡大した経緯のある現行経審とは、反対の影響を与える評価指標であるということです。
現行経審の公開データから、中小企業の経営状況を推定すると、3割程度の企業は「EBITDA」がマイナスであり、X2評点は加点されません。また「EBITDA」がプラスとなる7割程度の企業のうち3割程度の企業が平均値を超えると推定されます。すなわち中小企業全体の2割程度が、「EBITDA」の得点で比較優位になると思われます。

注意が必要な「EBITDA」

一方で、新たに導入される「EBITDA」を過度に重視すると、問題が起こる可能性があります。「EBITDA」の元となる営業利益の拡大は、本業重視の経営で実現されるので特に問題はありません。しかし、減価償却費を拡大しようとして、設備投資を過度に拡大すると、投資資金が莫大に必要になります。「EBITDA」は運転資金の増減とは関係ないので、「EBITDA」を無理に拡大しようとして、資金不足に陥らないよう注意が必要です。あくまで企業の中長期的な成長を見据えた、適切な設備投資を心掛けていただきたいと思います。

図1

注:経営事項審査の公表データから、2986社の中小建設業者のデータを単純無作為抽出しEBITDA概算値(営業利益 + キャッシュフロー - 当期純利益)を集計してグラフ化した

建通新聞 の記事を見る